動物病院について
初めに
【飼い主が一番の獣医】
犬業界では、よくこう表現することがあります。3つの大切な顔の一番重要な 飼い主 こそが、愛犬の体調変化を一番予見できるからです。
些細な体調変化に気付くことが出来れば、早期発見・早期治療につながります。その後、必要に応じて、獣医師の診察を受けることになります。
まずは、飼い主が正しい知識を持ち、どのタイミングで、動物病院に連れて行けば良いのかを判断する必要があります。
この飼い主の判断力は、獣医との距離感においても重要な要素になります。
動物病院の種類
実は、サロンやショップに比べて、動物病院のほうが多いです。また、最近では、様々なタイプの動物専門の医療機関が増えました。
動物病院には、いくつか種類があります。
- 一般的な動物病院
- 24時間対応救急動物病院
- 高度治療対応の動物病院
- 大学病院
- 専門分野に特化した動物病院
高度治療対応の動物病院は、近年増えた印象があります。眼科や形成外科のように、いわゆる専門医も増えました。飼い主の選択肢も増えたことになります。
動物病院に行く理由は?
動物病院に行く代表的な理由を簡単に解説します。
病気や怪我の治療のために行く
当たり前のことですが、怪我や病気の症状に応じて、治療を行う一般な診察になります。薬をもらったり、場合によっては、通院したりします。
利用頻度は、飼い主の考え方により、些細なことでも行って安心したい飼い主もいれば、大きな病気以外は、ほとんど病院に掛からない飼い主もいます。
定期健診を受けに行く
その名の通り、人間も受ける定期健康診断と同じものになります。
人間ドッグならぬドッグドッグなど精密な健診もあれば、手軽な採血検査もあります。こちらも、飼い主の考え方により、内容や頻度に差が出ます。
年齢が若いうちは、必要ないかもしれませんが、老犬になると、採血検査の数値をもとに、治療プランが組まれます。
ある程度の年齢(7歳ぐらいが目安になります)になったら、定期的な採血検査を始めて良いでしょう。愛犬の健康状態を把握できます。
ノミやダニの予防薬やフィラリアの駆虫薬をもらいに行く
季節性の予防薬や駆虫薬になります。
フィラリアは、蚊を媒介して感染し、血液中に寄生する病気で、処置が遅れると、死に至る場合もあります。処方される代表的な薬は、他の線虫にも効くので、’虫下し‘のつもりで、飲んでおくと良いでしょう。但し、1年を通じて飲む必要はありません。
成犬は、フィラリアの薬を処方される前に、必ず採血をして、ミクロフィラリア(幼虫)の有無を確認します。
料金は若干上がりますが、この採血検査の時に、一緒に他の数値も調べてもらうと良いでしょう。
そうすると、年に1回は、採血健診が出来ます。
ノミやダニの駆虫薬は、飲み薬のタイプと肩甲骨に間に滴下するタイプがあります。個体によって、体質に合わない場合があり、飼育環境によって、必要・不要が左右されますので、相談の上、決めましょう。
ちなみに、ドラッグストアなどでも販売してる類似品は、あくまで薬ではないので、効果は限定的になります。
筆者のおすすめは、フィラリア検査の採血を利用して、健康チェックすることです。
そうすると、年に1回は、採血健診が出来ます。
混合ワクチンや狂犬病ワクチンの予防接種に行く
ワクチン接種が必要な代表的な感染症
- 犬パルボウイルス感染症
- 犬ジステンパーウイルス感染症
- 犬レプトスピラ感染症
- 犬伝染性肝炎 アデノウィルス I型 Ⅱ型
- 犬コロナウィルス感染症
- ケネルコフ アデノウイルス Ⅱ型
- 犬パラインフルエンザ感染症
なぜ予防接種は必要なのか?
犬には感染し、治療が遅れると高い致死率の伝染病があり、この伝染病に対する抗体をつけるために、混合ワクチンを定期的に接種します。
どのくらいの頻度で接種するのか?
仔犬の場合は、移行抗体が切れる生後4か月齢ぐらいまでに、2回~3回の予防接種(混合ワクチン)を受けます。成犬になると、年に1回の混合ワクチン接種が一般的になっています。
成犬になってからの接種は、抗体がどれだけ維持されているか(1年から3年と言われています)を調べることも出来ます。また、飼育環境によって必要されるワクチンに違いもありますので、獣医と相談すると良いでしょう。
移行抗体について
仔犬は、母犬の胎盤や初乳(主産後36時間以内程度のお乳のこと)から移行抗体を受けることによって、感染症から守られています。しかし、この移行抗体も3か月程度で無くなってしまいます。
特に、パルボウイルスとジステンパーは、仔犬が感染すると、かなり高い致死率になります。
狂犬病ワクチン
唯一、法律で義務付けられている感染症になります。(狂犬病予防法)
狂犬病は、人畜共通感染症(ズーノーシス)なり、生後91日を超えた犬を所有する場合は、登録を受け、予防注射を接種しなければなりません。
毎年、予防注射を受け、届いた鑑札を首輪などに着けます。
高齢やアレルギー反応などを理由に、ワクチン接種を見送ることが出来る「猶予証明書」を獣医に出してもらうことも可能です。
海外では、人への感染も報告され、亡くなっているケースもあります。実は、犬だけではなく、他の動物も感染します。アメリカでは、コウモリの感染媒体が問題になっています。
日本は島国ですので、水際で感染を防いている状況です。国内での発症例は昭和30年代から確認されていません。こういった状況が、狂犬病への意識の低下に繋がっているかもしれません。
但し、同じように感染が確認されていなかった台湾では、2013年に、実に52年ぶりに、野生動物への感染・流行していたことが判明しました。
避妊や去勢手術
女の子の避妊手術は、将来的な病気のリスク軽減が主な目的で、男の子の去勢手術は、しつけ面(おしっこのマーキング)での意味合いもあり、成長期の10か月齢ぐらいまでに手術するケースが多いです。
筆者もこの避妊・去勢に関しての質問は良く受けます。
『経験上、筆者個人の考えとしては、女の子は発情が最低1回は来てからが良いと考えます。発情を迎えずに、手術をした場合には、体質に多少影響が出るケースを多く目にしています。海外でも、初めての発情が来る前の手術に関しては、推奨されていません。男の子は、オスとしての性成熟前にすると効果的でしょう。』
この避妊・去勢に関しては、獣医師の中でもかなり意見に開きがあるので、情報収集してから、冷静な判断が求められます。
併設のトリミングルームやペットホテルの利用
トリミングサービスがある動物病院で、シャンプーやカットをしてもらったり、愛犬を動物病院で預かってもらいます。
薬用シャンプーが必要な皮膚病や怪我などの症状がある犬には、便利かもしれません。また、体調不良や治療中のペットホテル利用も、獣医がいるので、安心して預けられるのも利点です。
*トリミングサービスを行っていない動物病院もあります。
獣医の選び方
動物病院を探す方法は以下の通りです。いずれか一つの方法で探すというより、すべての情報を集めて探すのが良いでしょう。
- インターネットなどによる近隣検索
- ブリーダーからの紹介
- ショップやサロンの紹介
- 散歩仲間などの評判
まずは、ワクチンなどで、実際に行ってから、最終的には、獣医の人柄や動物病院の雰囲気などで決めると良いでしょう。
良い獣医は、たくさんの選択肢を与えてくれます。ご自身の考えに信念があることの裏返しでもあります。
無理に、一つに絞らなくても良いです。2つぐらいの動物病院の情報を持っていて、目的によって使い分けたり、セカンドオピニオンを聞きに行ったりしましょう。
特定の症状や治療方法が限定されている病気に関しては、専門獣医を訪ねても良いかもしれません。
動物病院が決まったら、かかりつけの獣医に救急外来出来る医療機関を、必ず聞いておきましょう。
夜間で、かつ初めての場合、治療方法や料金などでトラブルになるケースがあります。
事前に、紹介してもらいましょう。
常に、情報収集のアンテナは立てておいて、新しい情報を得るようにしましょう。
最後に
距離感が大事
すべてお任せできるような獣医と出会えるのは、意外と少ないのが現状で、動物病院の数に比例して、考え方も千差万別です。
薬を多用して、早期の完治を目指す獣医もいれば、最小限の治療で、様子を見る獣医もいます。治療することに代わりはないのですが、飼い主の考えに合っているかもとても大切です。
筆者も、”良い動物病院をお紹介してほしい”と言われることがしばしばあります。常に、情報収集されている飼い主は、意外と多いのが現状です。
重要なのは、獣医との距離感です。
獣医から提案された治療方針や薬などは、飼い主が正しく理解してから始めましょう。重大な治療の選択を迫られた時などには、別の獣医にセカンドオピニオンを聞いてみたり、担当のトリマーやトレーナーの意見も聞くと良いでしょう。
多方面から、情報収集すれば、最良の判断をすることが出来るでしょう。
冒頭説明した通り、一番の獣医は、飼い主であることは、常に忘れずにいましょう。
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