マット冷凍方法によるダニ対策のレポート 前編
はじめに
カブトムシの幼虫飼育においては、成虫同様、ダニ対策とコバエ対策は必須になります。
ダニに関しては、殲滅は無理にしても出来るだけ軽減するというのが、現実的な対応になります。
成虫飼育時から幼虫が大きくなるまでの飼育過程でのダニ対策の詳細を解説していきたいと思います。
*これから説明する内容は、室内で管理した結果の報告になります。
*ダニやコバエがはっきりわかる画像は使用していませんのでご安心ください。
ダニについて
そもそも、幼虫マット(広葉樹の腐葉土)には、必ずダニはいるものと考えるべきでしょう。ダニも寄り付かないような腐葉土は、幼虫にとっても栄養満点の良質なマットではありません。
ダニは、大量に発生させないように管理するのがベストと考えましょう。
コバエについて一言
筆者の場合、コバエに関しては、1匹も発生していないので、現在のところ、100%対応できています。
コバエの対策も、基本ダニ対策と重なる要素が多いので、ダニの軽減を試みれば、コバエの対応にもなります。
*コバエ対策に関しては、飼育ケースとマット選びで、ある程度対応できます。
ダニ対策のポイント
- 室温
- 湿度
- 飼育ケース
- 幼虫マット選び
細かなアイテムはありますが、基本はこの4つに尽きると思います。
4つのポイントの説明
結論から言えば、④のマット選びが、ダニ対策のメインになります。
①・②の対応に関しては、室内で飼育する以上は、人間が快適な環境に依存するのが基本になりますので、過度に意識する必要はないと考えます。
但し、猛暑にエアコンをつけ忘れたなど、室温・湿度の高い環境を作れば、ダニの大量発生を促す結果になりかねませんので、注意が必要になります。
*筆者は、これでダニの大量発生を促してしまいました。
③の飼育ケースに関しては、外部より侵入しにくい商品を選んでいます。
飼育ケースの詳細説明は、「現在の飼育環境」の部分で説明しています。
④のマット(腐葉土)に関して、詳しくレポートしていきたいと思います。何故ならば、ダニはマットの中に潜んでいるからになります。
「ダニ対策 」イコール 「マット選びとマット管理」と言っても過言ではないでしょう。
*ワイルド種(天然のカブトムシ)には、既にダニが付着している可能性はあります。
マットの代表的なダニ対応策
- 天日干し
- 電子レンジなどの高温処理や煮沸
- 冷凍処理
今回は、冷凍処理 の方法を試してみたいと思います。
天日干しや電子レンジ、その他の対応策もありますが、冷凍庫の問題が解決しているのと手間暇を考えて、冷凍処理 を選択しました。
天日干しも良い選択しだと思いますが、ある程度のスペースを確保する必要があります。また、日光にさらしている間に、コバエに卵を産ませないような対策も必要になります。
ちなみに、レンジなどの高温でダニを殲滅させると、腐葉土に必要なバクテリアまで死滅させてしまうようなので、こちらは控えほうが良さそうです。
小分けが楽。
筆者は、10Lを5Lのバケツ2つに分けて、ダニピタクリーンを先に混ぜてしまいます。理由は、ダニピタクリーンを均等に混ぜるためです。ダニピタクリーン1袋で、12L 分になります。
小分けにして冷凍しているので、必要分だけ解凍します。
*購入後すぐに開封して小分けすれば、加水などしなくても、マット自体の保湿でちゃんと凍ります。
*ダニピタクリーンは、解凍後に混ぜても良いと思います。
一言コメント
*購入をおすすめするほど確実な成果はまだ出せていませんが、 購入を検討するなら、32L~40Lぐらいのコンパクトなもので十分だと思います。
それでは、マットの冷凍対策にて、ダニの発生を軽減するべく、様々試してみたいと思います。その経過をまとめてみました。
現在の飼育環境
現在の状況は、国産カブトムシ幼虫 6頭飼育中です。全て3齢虫ですが、産まれた時期に誤差はありますので、サイズの違いはあります。
(2019年 9月中旬 現在)
幼虫の飼育ケースは、ダイソーで売っていた洗濯ネットに入れて管理しています。
一応、ダニとコバエ対策の一つになります。
飼育ケース
現在、幼虫用の飼育ケースとして、主に、下記の2種類を使用しています。
- クリーンケース(三晃商会) S 業務用 仕切り板付き
- ダイソー 飼育ケース 小
クリーンケースだけでも良かったのですが、色々試したかったので、ダイソー 飼育ケース 小 も使用しています。
飼育ケースの内訳
クリーンケース S 3個に、5頭(2頭・2頭・1頭)で飼育しています。仕切り板を使っているので、単独飼育になります。残りの1頭をダイソー 飼育ケース 小 で飼育しています。
(2019年 9月中旬 現在)
*ダイソーのケースは、密封容器ではないので、コバエ対策用のディフェンスシートを蓋とケースの間に挟んでいます。クリーンケースは、シートの必要がないので、使用していないです。
クリーンケースのセールスポイント
『密着仕様の天蓋で、小径の通気孔がコバエの侵入やマットの乾燥を防ぎ、成虫の排泄物の飛散も防止します。サイドロックで逃走も防止します。』
*上記の文面は、三晃商会さんのwebサイトの文言から抜粋・編集したものです。
クリーンケースのメリット
霧吹き要りません。
室温やマットの湿り気具合にもよりますが、 マット自体の保湿でケース内に結露が出来るくらいです。
写真の結露は、多めの霧吹きの後のものなので、通常はここまでの結露にはなりません。
臭いもほぼ漏れません。
生活していて気にならないレベルです。コバエの侵入を防ぐように通気口が小さいので、臭いも漏れません。
昆虫に対して、非協力的なご家族がいる方には、おすすめします。
クリーンケースの注意点
サイドロックもしっかりしていて、成虫の逃走の心配もありませんが、閉めるときに、カチッと音がします。毎回この音が、幼虫や成虫にストレスを与えていないかは少し気になります。
霧吹きの心配は要りませんが、結露を拭き取る必要はあります。
(*室内の温度などの環境に依存します。)
飼育ケース 番外編
ダイソー以外に、SANKOパーテーションケース 小 (三晃商会)も意外とおすすめになります。仕切り板がついているので、2頭の単独飼育が可能になります。
筆者も使用したことありますが、ダイソー 飼育ケース 中 とおなじ大きさになります。
使用マット
カブちゃんマット(九十九里クワガタファーム)10L
楽天市場
カブトムシ専用マット・カブちゃんマット 10L(カブトムシ産卵・幼虫用マット)【売れ筋】
カブちゃんマットのセールスポイント
『商品回転率が良く、常に新鮮なマットで、水分調整なしですぐに使用できます。中粗めが混じっているので、幼虫用には最適で、フルイにかける必要がありません。室内で製造管理されているため、雑虫の混入が極めて少なく、ダニの発生も軽減しています。夏場のロットは、少し臭いがきつい場合がありますが、2、3日空気に触れさせると臭いが消えます。』
*上記の文面は、九十九里ファームさんのwebサイトや注文時に頂いた資料の文言から抜粋・編集したものです。
選んだ理由
カブちゃんマットを選んだ理由は、室内で製造された良質なマットで、産卵時と幼虫飼育の両方に使用できたことと、雑虫の混入が少ないことになります。
実際、コバエに関しては、マットの冷凍処理を試す前から、1匹も発生していません。
産卵時より使用しています。成虫のペアを かぶちゃんマット を10㎝ほど敷き詰めた クリーンケース L で飼育していました。
現在は、幼虫用のマットとして使用し続けています。
カブちゃんマットを使用してみて
- 食べつき ◎
- コバエ対応 ◎
- 臭い 〇
- ダニ △
臭いに関しては、そんなに気にならないというのが正直な感想で、数日で落ち着きます。少し残る臭いも、使用中のマットの状態を把握する上では、基準になります。
品質は安定しているように感じます。ダニの発生以外は大変満足しています。
マット紹介 番外編
育成マット(三晃商会) 5L
カブちゃんマットが切れてしまい、Amazonで評価が高かったので、一度購入し、使用してみました。
使用した感想は、カブちゃんマットとの違い育成マットのほうが少しもっさりとした感じがしました。(カブちゃんマットのほうが、 一粒が サラサラしているように感じました。)
臭いは、育成マットも少し臭います。臭いは意外と似ていましたが、少し鼻につく臭いで確実に違いが分かりました。カブちゃんマット同様、数日で気にならなくなりました。
冷凍処理後しか使用していないので厳密な比較はできませんが、雑虫の発生は確認していません。
また、混ぜて使用してしまったので、ダニの発生に関しても、断定的なコメントはできませんが、ネットの口コミなどの評価は、概ね良いマットのようです。
育成マットを使用するのなら、10L のがコストパフォーマンスは良いでしょう。
1回目のダニ発生(8月中旬)
「飼育ケース No.1」
クリーンケース L(成虫用飼育ケース)にて、 成虫のペアを カブちゃんマットを10㎝ほど敷き詰めて、飼育を始めました。
成虫のペアを飼育しながら、産卵用のマットとして、併用していました。
事前対策
・カブちゃんマットに、ダニピタクリーン(フジコン)を混ぜて使用し始めました。
・ヒノキチップをマットの上に敷き詰めていました。
ヒノキは、針葉樹になりますので、雑虫はこれを嫌います。また、消臭効果も期待できます。
使用期間
7月中旬から、8月中旬まで。
結果
8月中旬に、日中 エアコンの除湿を切っていた2日間で、ダニ大量発生。
原因
- エアコンでの室温管理 失敗。
- クリーンケース内の湿度が高い。
- 成虫のおしっこや餌によるマットの汚れ。
クリーンケースは密封容器になるので、基本湿度が高めになります。実際に、乾燥対策の霧吹きはしなくても大丈夫なぐらいです。
筆者は、たまに霧吹きをしていたので、より湿度の高い環境を作ってしまっていました。
更に、気付いていなかっただけで、少量のダニは活動していたと推測されます。
朝、クリーンケースの湿気で曇った天蓋に、カタツムリの通ったような細い線がたまにありました。
対策
大量発生のため、冷凍保存したマット(24時間程度 冷凍)へ全交換しました。
「飼育ケース No.2」
クリーンケース M にて、幼虫専用の飼育スペースを確保して、かぶちゃんマットを使用しました。
初齢~2齢虫を15頭ほど管理していました。「飼育ケース No.1」のマット掃除のときに、産まれていた幼虫を隔離していました。
使用期間
8月上旬から、8月中旬まで。
事前対策
・カブちゃんマットに、ダニピタクリーン(フジコン)を混ぜて使用し始めました。
結果
成虫のケースと同時時期に、ダニ大量発生。
*「飼育ケース No.1」と、同じ原因だと推測されます。
「飼育ケース No.1」と同じく、全交換しました。(24時間冷凍マット)
2回目のダニ発生(9月初旬)
知り合いに幼虫を譲って、残った8頭を4つのケースに分けていました。
事前対策
2日間、冷凍保存したカブちゃんマットを自然解凍して、追加で ダニピタクリーン(フジコン) をもう一度混ぜてから使いました。
「飼育ケース No.1」
クリーンケース L (成虫飼育)は、下層部分に かぶちゃんマット を使用し、上層部分は、ミタニ 防ダニ王 5L を敷き詰めました。
ミタニ 防ダニ王 は、100%天然素材の針葉樹マットで、ダニ・コバエの抑制と消臭効果が見込めます。
*針葉樹のマットなので、成虫にしか使えません。
「飼育ケース No.2」
クリーンケース M(5頭 複数飼育)は、同じく2日間、冷凍保存したマットを使用しました。ケースの深さの6割ぐらいまでマットを入れ、中央下部に、クヌギの朽ち木(煮沸消毒 済)を埋めてみました。
「飼育ケース No.3」
クリーンケース S(2頭 単独飼育)は、仕切り板を使用し、別々に管理してしました。マットの量はケースの深さの9割ぐらいまで入れ、こちらもクヌギの朽ち木を埋めました。
「飼育ケース No.4」
クリーンケース S(1頭 単独飼育)は、仕切り板無しで広く使用しました。 その分、ケースの深さの半分ぐらいまでしかマットを敷いていません。(クヌギの朽ち木 入り)
使用期間
8月中旬から9月初旬まで。
結果
9月初旬に、ダニが発生しました。目視で確認できる数が発生したので、前回より早めに対策を講じることにしました。
ダニの多さは、成虫用ケースが一番多く、「飼育ケース No.4」の単独飼育に関しては、ダニの発生は確認していません。
対応策
木酢液(100倍希釈)を使用してみることにしました。
「成虫飼育ケース」
「飼育ケース No.1」(成虫用ケース)では、ケース内側に木酢液をスプレーして様子を見ました。
対応後の結果
ダニの活動は、抑制できませんでした。
全てのマットを ミタニ 防ダニ王 5L に交換しました。
「幼虫飼育ケース」
「飼育ケース No.2 No.3 No.4」(幼虫ケース)では、ケース内側とマット表面に木酢液をスプレーし、ダニピタクリーン(フジコン)を表面に覆うように散布しました。
*「飼育ケース No.4」(1頭飼育 ケースの半分ぐらいのマット量)は、相変わらず、ダニの発生を確認していませんが、同じ対応をしました。
対応後の結果
こちらは、ダニの活動が目視で停止しました。
翌日、「飼育ケース No.3」のマット上部に活動するダニを1匹発見したので、再びスプレーして様子を見ました。
その後、目視で確認していないので、木酢液はそれなりの効果があることが分かりました。(特に、マットへの直接スプレーが有効ではないかと感じました。)
どの程度、効果を継続できるのか把握したかったので、数日間はそのまま様子を見ました。
「飼育ケース No.2」
その後、ダニの発生は確認していません。
更に、2頭を知り合いに譲ることになったので、クリーンケース M (5頭飼育)の幼虫を分けることになりました。内訳は、クリーンケース S (2頭飼育 仕切り板使用)・ダイソー 飼育ケース 小(1頭飼育)になります。
「飼育ケース No.3」
クリーンケース S (2頭飼育)の内側に結露が出来ましたが、そのままの状態で観察しました。
4日目に、活動の痕を発見しました。結露の場所に卵も発見しました。
本来の目的の冷凍マットの効果を確かめるべく、マットの全交換を決断しました。
マット交換時の注意点
実際は、マットの全交換は幼虫に少なからず、ストレスを与えます。
フンを取り除いた古いマットと新しいマットを混ぜるのが、ベストでしょう。
マット内に共生するバクテリアなどを引き継ぐことが幼虫を大きくするコツのようですが、 ギネスクラスの幼虫にチャレンジしているのではなく、ダニの軽減が目的なので、全交換を選択しました。
前編の結論
・室温は、低めの設定で良いと思います。
自然の雑木林は、夏でも意外と涼しいので、 室温もやや涼しめで管理するのが良いのではないかと考えております。
・湿度も重要な要素になります。
「飼育ケース No.4」は、ダニの発生を確認していませんので、ケース内のマットの量が多いと、湿度の高い環境になりやすいのだと思います。
・木酢液は、一定の活動抑制効果はあります。
特に、マットへの直接スプレーが良い結果がでると予想されます。
但し、継続的に使用するのには、幼虫への影響を考慮する必要がありそうです。
交換するマットは、冷凍庫で14日間、冷凍保存したのち、更に2日間の2度冷凍をしたカブちゃんマットを試す予定です。
ちなみに、ダニの発生したマットは、フンを取り除いたあと、再び冷凍保存してみることにしました。 何かのタイミングで再使用してみたいと思います。
結果は、ダニ対策のレポート 後編 でお伝えします。
今回使用したグッズの紹介になります。
まとめ
ダニ対策で、最も重要なポイントは、飼育ケース内の湿度だと考えられます。
クリーンケースのような密封容器は、まめに蓋を開けて、湿気を逃がすことが抑制につながると考えられます。
室温もやや低めで管理すると良いでしょう。エアコンは、除湿運転でも良いでしょう。
木酢液でケース内を掃除するのも、良いのではないかと考えています。最後に、乾いたティッシュなどで、乾拭きすることも忘れないようにしましょう。
以上、ダニ対策レポート 前編でした。
続きは、【ダニ対策レポート 後編】 をご覧下さい。