法令の解説について
ここでは、「動物愛護法」を全般的に解説するのではなく、本サイトのテーマでもある’初めて犬を飼う’飼い主と、関連のある内容に重点をおいて、簡潔に解説していきます。
正式名称は、「動物の愛護と管理に関する法律」になります。
基本原則は、以下の通りです。
すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めています。
19世紀初頭のイギリスに始まった動物愛護運動が日本に伝播し、明治後期に、動物虐待の防止や動物愛護の精神を唱える日本で初めての動物愛護団体「動物虐待防止会」が広井辰太郎氏により設立されました。 のちに名前が「動物愛護会」に変更されました。 その後、大正から昭和にかけて、動物愛護運動が広まっていきました。
簡単な歴史概要
- 昭和48年に 「動物の保護と管理に関する法律(動物保護法)」 を制定。
- 平成11年に、名称が「動物の保護と管理に関する法律(動物保護法)」から、 「動物の愛護と管理に関する法律 (動物愛護法)」に変更になりました。
- 平成24年から法改正が進み、ペットを販売する業者への規制が一部改正された動物愛護法が平成25年9月1日から施行されました。
法改正後の規則について
動物取扱業を「第一種動物取扱業 」と「第二種動物取扱業」 に分けています。
追加した営利性の無い「第二種動物取扱業」( 動物愛護団体の動物シェルターなど)は、届出制としました。
第一種動物取扱業(ペットショップ、ブリーダーなど営利目的の業)は、都道府県への登録制になり、登録に際して、施設のチェックや「動物取扱責任者」の配置など細かい規制ができました。
登録については、7種別(販売・保管・貸出し・訓練・展示・競りあっせん業・譲受飼養業)に細分化されており、生体販売の場合は、「販売」の登録が必要になります。トリミングサロンやペットホテルでは、「保管」の登録が必要になります。
種別毎に登録を行います。よって、生体販売もするトリミングサロンは、「販売」と「保管」の両方が必要になります。
ちなみに、動物園や水族館は、登録の種別「展示」になります。
動物取扱責任者
事業所ごとに、「動物取扱責任者」の設置が義務付けられています。
業務を適正に営むために必要な知識を持つ者(実務経験や所定の資格)でなければ「動物取扱責任者」になれません。
動物取扱責任者には、都道府県による年1回の講習も義務付けられています。
講習会を受講すると、終了証が交付されます。
飼い主にとっての動物愛護法
人と動物の共生がテーマの一つでもあります。
飼い主においては、マナーを守り 、周囲に迷惑をかけないようにしましょうという目的もあります。 (飼い主の責任や危険動物の飼養規制など)
幅広い関心と理解を深めるため、毎年9月20日から26日までを「動物愛護週間」とし、各自治体でテーマに沿った行事も実施しています。
このようなイベントは、とても良いことですし、飼い主のマナーの向上にも繋がります。
「動物愛護週間 」については、一度は耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか。
余談ですが、秋の交通安全週間と時期が重なることが多いです。
仔犬購入時と法改正について
動物愛護法の内容は、飼い主が仔犬を飼う上で、詳細を知っておくべき内容というより、動物取扱業に対して、規制や一定の基準を遵守するように制定されている条文が多く含まれています。
生体販売に関しても、プロのペットショップやブリーダーなどが遵守すべき基準などが法改正で改められています。
例えば、動物取扱業として登録されていることを表記しなければなりません。
第一種動物取扱業の登録証は、店舗であれば、見やすい壁などに張り付けておく必要があります。
また、インターネットの webサイト上 にも表示が義務付けられています。
登録証には、動物取扱責任者の氏名・有効期限や種別も表記されています。
ブリーダーの仔犬見学の施設にも、必ず表示されていますので確認してみましょう。
以前は、生体販売時に特に規制はありませんでしたが、現在は、対面での説明や書面の交付や生後49日以内での仔犬の販売・引き渡しの禁止など、様々なルールが課せられています。
*平成28年9月1日より、仔犬仔猫の販売制限が生後49日以内になりました。施行日は未定ですが、今後、生後56日以内に変更になる予定です。
対面説明の項目は、18項目と細かく定められています。その中には、上の登録証の情報も含まれています。
筆者のサロンでも、生体の販売時は、最新の注意を払っていますし、経験あるブリーダーも法令順守に努めているように思います。
購入時の注意点についてのアドバイス
仔犬を購入になる上では、管理する側の経験の有無を確認することが重要になってきます。
可愛い仔犬の顔を見て、テンションが上がったり、実際に仔犬に触れたりできる状態の時は、一旦、気持ちを落ち着かせ、販売側がいかにプロとして経験値があるかを見極めましょう。
動き回る仔犬の良し悪しを見分けるのは、飼い主にはとても難しいと思いますので、 いかに信頼できるショップやブリーダーを探すことが大切になります。
不安なことなど質問をして、色々な話を聞くと、管理側の経験値を見極めやすいと思います。
法令を遵守していて、かつ豊富な経験を有するプロから購入できれば、健康で良い仔犬と出会える可能性が高くなり、その後のアフターケアも安心できます。
何代も同じプロから購入して長くお付き合いされる方も多くいますので、仔犬のみならず、良い出会いを探しましょう。
一言コメント
以前、仔犬に洋服を着せてショーウィンドウで販売しているショップを見かけたことがあります。
営利目的を重視して、新陳代謝の活発な仔犬に洋服を着せることがどれだけの影響があるかを、管理する側として客観的に判断すべきだと感じました。
プロとして、行き過ぎた光景にショックを受けたことを思い出します。
東京都の新しい取り組み
(2019年 9月25日 追記)
平成31年度(令和元年)より、東京都では、第一種動物取扱業者に対して、新たな説明事項の説明を追加するように呼びかけを始めました。
この取り組みは、現段階では説明義務ではなく、あくまでアンケートのような形で、飼い主に対して、動物を飼育する責任を購入する前に、もう一度考える機会を与えるものになります。
今後、説明義務のある18項目にどのように追加されていくかは不明ですが、「対面説明」より前に、飼い主に示すのが、タイミングとしては良いでしょう。
動物販売時追加説明事項は、10項目になっています。
こちらは、東京都は示した一例になり、10項目の内容が盛り込まれていれば、様式に制限はありません。
*こちらの画像は、東京都福祉保健局が作成したPDFファイルより抜粋したものになります。
このような取り組みは、推奨されるべき内容で、将来、説明義務化されていくことが望ましいでしょう。
動物愛護法の法改正の重要性
動物愛護法令が、時代背景に応じて改正され続け、プロの業者と飼い主が誠実に遵守していくことが、動物と人間社会の関係の向上に繋がっていきます。
動物取扱業には、命ある動物だからこその不確定な要素や難しさは常にあります。
例えば、司法においては、家族の一員であるかけがえのないペットでも、基本的には「物」になります。
但し、動物愛護法においては、命あるモノとして、「物」以上の存在であると捉えられています。
近年、販売や保管(ホテル中やトリミング時の事故)などのトラブルが裁判沙汰になることも増えてきているという現実もあります。
ペットが、より家族に近い存在として迎えられていることの裏返しでもありますし、「物」から、いのちあるモノへと変わりつつある兆しでもあります。
人とペットとの関係も、時代により変化してきますし、それに伴い、共生の考え方も変わります。
法改正は、悪徳業者やインターネットネットでのトラブルを減らすことだけが目的ではなく、法令をキチンと遵守している業者側の保護にも繋がっています。
動物取扱業を営む側としては、意義のある改正(罰則も含む)は、不可欠であり、歓迎されると感じています。